![]() ![]() 私は、DAW(Digital Audio Workstation)はSinger Song Writer V8を使用しております。音源として、SC-8850とHQ-Orchestralを使用してきましたが、この度、ソフトウェア・サンプラであるGarritan Personal Orchestraを導入してみました。ちゃんと動作しましたので、それのご報告を兼ねまして、使い方を書き残しておくことに致しました。英文のマニュアルは添付されておりますが、これを読んだだけでは、とても使いこなせません。 Singer Song Writer V8は、VSTプラグインに対応しておりますので、Garritan Personal OrchestraをVSTとして使うことにしました(というか、DXiとかスタンドアロンの使い方があるそうですが、私は使い方を知りません)。 尚今回私がGarritan Personal Orchestraを使えるようになったのも、その全部をkaeru298様に教えて頂いたおかげで実現したものでして、ここに深く感謝申し上げます(下記の文章および、図表の殆どは教えて頂いた時の、そのものを掲載しています)。 もしご使用になられる場合は動作環境にご注意下さい。Memory 1GBは必須の条件のようです。 Garritan Personal Orchestra Kontakt Player2の基本的な使い方については、こちらに記載しました。
目次
1.インストール、ソフトウェアオーソライゼーション編 これはマニュアルに書かれておりますので、ここでは省きますが、VSTプラグインオプションはSSWのVSTPluginのフォルダーに入れる必要があります。 2.音の出し方編 2-1 VSTインストゥルメントのアイコンをクリックします。赤矢印のところです。 ![]() 2-2 VSTインストゥルメントのパネルが現れますので、下図のようにPersonalOrchestraVSTをクリックします。 ![]() 2-3 PersonalOrchestraVSTが一番上の窓に入ったら、次にEDと書かれたボタンをクリックします。 ![]() 2-4 キーボードの画像が現れます。 ![]() 2-5 ソングエディタの画面を開き、赤矢印のところをクリックします。 ![]() 2-6 プルダウンメニューが表れますので、一番下にあります、PersonalOrchestraVST(1)をクリックします。 ![]() 2-7 Track8まで、PersonalOrchestraVST(1)を入れてみました。尚楽器名が入る箇所にはこれから後を読んでいろいろな操作をしましても、一切garritan personal orchestraの楽器名は出てきません。ここに入っている楽器名、0:0:1:Piano 1と書いてありますのは、私が所有しておりますSC-8850の楽器名です。 また、重要なことですが、CHと書いてあるところですが、VST(1)が8Trackまで行って、更に楽器が増えますと、VST(2)になりますが、ここでCHのところは9~16では無くて、また1~8を入れます。これを間違えますと、VST(2)に入れた楽器の音は鳴りません。2-11項をご参照下さい。 ![]() 2-8 キーボードの説明 ![]() 2-9 キーボード上に音を入れていく ![]() 2-10 ![]() 2-11 各GPOインスタンスは8トラック音源として振る舞う GPOの各インスタンスが8トラックの音源モジュールであるため、9トラック以上の楽曲を演奏するためには、複数のGPOインスタンスを起動する必要があります。SSWでは8つのインスタンスがあり、それぞれが8トラックですから、合計64トラックが使えるということです。 例えば16種類の楽器を使う場合に一番分かり易い組み立て方と しては、 [SSW上] Track1:楽器1 - VST(1) - CH1 Track2:楽器2 - VST(1) - CH2 Track3:楽器3 - VST(1) - CH3 Track4:楽器4 - VST(1) - CH4 Track5:楽器5 - VST(1) - CH5 Track6:楽器6 - VST(1) - CH6 Track7:楽器7 - VST(1) - CH7 Track8:楽器8 - VST(1) - CH8 Track9:楽器9 - VST(2) - CH1 Track10:楽器10 - VST(2) - CH2 Track11:楽器11 - VST(2) - CH3 Track12:楽器12 - VST(2) - CH4 Track13:楽器13 - VST(2) - CH5 Track14:楽器14 - VST(2) - CH6 Track15:楽器15 - VST(2) - CH7 Track16:楽器16 - VST(2) - CH8 [VSTインスタンス(1)] 楽器1 - MIDI CH1 楽器2 - MIDI CH2 楽器3 - MIDI CH3 楽器4 - MIDI CH4 楽器5 - MIDI CH5 楽器6 - MIDI CH6 楽器7 - MIDI CH7 楽器8 - MIDI CH8 [VSTインスタンス(2)] 楽器9 - MIDI CH1 楽器10 - MIDI CH2 楽器11 - MIDI CH3 楽器12 - MIDI CH4 楽器13 - MIDI CH5 楽器14 - MIDI CH6 楽器15 - MIDI CH7 楽器16 - MIDI CH8 と、このようになります。 2-12 オプションについて 2-8でキーボードの図の中に、オプションのことについて、"オーディオインターフェイスなどの設定はここをクリック"と書かれていますが、そのオプションでの注意事項を説明します。下の図で、赤矢印で示したところですが、ここはデフォルトではoffになっていますが、onにします。 Volume値とPanpot値が効くようになります。ここをonにしないと、どうも音量が小さいと悩むことになります。 ![]() また、下図で、4つの選択肢が出ますが、ここは一番下のnormal sustain/sustenuto operation plus MIDI switchを選びます。 CC#64、ピアノのペダルon,offの効果が出ます。 ![]() 目次へ戻る 3.モジュレーション編 これで、トラックに音符を入れれば、音が鳴ります。 ところが、ここで問題が発生します。鳴らない音があるんです。 GPOに読み込んだばかりの(つまりデフォルトの)場合、そのMod値は最小(Mod=0)なので弦のロングトーンが軒並みppになってしまうのに対して、鍵盤楽器などではModが無効(Velocityのみが有効)なので大きな音が出るのです。従って、必要に応じてトラックの最初にModを適切に挿入してあげる必要があります。 GPOの場合、弦楽器の場合はモジュレーションが音の強さを決めます。私は最初このことが全く分かりませんでした。 他の楽器の場合にはエクスプレッションがその役目を果たすこともあります。では、ヴェロシティは音の強さに無関係なのか、とか、疑問が出て参りますが、モジュレーション、エクスプレッション、ヴェロシティをいろいろ操作して調整する必要があると思います(私はやり始めたばかりなので、楽器毎に音の強さを決めるコントロールチェンジの種類がまだ分っておりません) (注)ModはModulationのことです。 目次へ戻る 4.キースイッチ編 ここまでの操作で音は出るようになりました。一つの音色のまま曲が終われば問題ないのでしょうが、例えば弦楽器ですと、ピチカート、トレモロ、トリルなどいくつもの表現方法があります。 こういう場合にキースイッチが役目を果たします。つまり、同一のトラック上で、例えばTrack1の上で表現方法をいろいろ変えることが出来ます。それが次に述べるキースイッチの役目です。 私は最初、キースイッチの機能は、打ち込みが終わったら、演奏させてみて、例えばピチカートの部分にさしかかったら、その都度、キースイッチのキーを押さなければならないものだと思っておりましたが、そうではなくて、シーケンスソフト側で、ある奏法を演奏したい直前に、キースイッチに対応した音符を挿入すればよいのです。ですから、ここはピアノロールエディタの出番になります。ピアノロールエディタは普段使ったことがない方でも、キースイッチだけはピアノロールエディタから入力します。 サンプルとしてkeyswitching.midを用意しました。 keyswitching.mid(ここから右クリックでダウンロードして下さい。) keyswitching.midを読み込み、GPOにStringSectionのVlns 1 KSを割り当てた状態で再生して下さい。本midファイルは、テンポ:MM=80、拍子:4/4、調号:C-durを想定しています。 シーケンサ毎に中央ハ音の割り当てが違います。もしこのファイルを最後まで再生しても奏法の変化が起こらない場合には、全音符データを+1オクターブもしくは-1オクターブ移動してみて下さい。ソングエディタのKSとなっていることろに12とか-12と入れます。コントラバスは-12です。 以下の小節番号は4/4換算です。(1小節目一番最初のMIDI CC 1は単なる音量調整ですので、無視して下さい) ---------------------------------------------------------------------------------- 4-1 キースイッチ:C1…レガート/デタッシェ奏法 2小節目直前~3小節目末:デタッシェ奏法の演奏例2小節目の直前にあるC1とCC64=0の組み合わせで、デタッシェになります(注:デタッシェ奏法というのは、ノンレガートと同じ意味で、弦楽器で弓の上げ弓と下げ弓とを交互に用いて音を明瞭に分離する奏法です) 5小節目直前~6小節目末:レガート奏法の演奏例 5小節目の直前にあるC1とCC64=127の組み合わせで、レガートになります。 前出のデタッシェと比較すると、「ん~、レガートと言われればレガートかなぁ」…という程度の効果(笑) ちなみにこれはレガートであって、ポルタメントではありません。(注:ポルタメントというのは、弦楽器で、一つの音から他の音へ音程を運ぶとき、跳躍的音階的ではなく、非常になめらかに演奏することを言います)。 なお、CC64の値は0~63での間の任意の値でデタッシェ、64~127の範囲でレガートです。 C#1については、今ひとつ効果が実感出来なかったので省略します。 ---------------------------------------------------------------------------------- 4-2 キースイッチ:D1、D#1、E…スタッカート奏法 キースイッチ:E1…ダウン・ボウ(下げ弓)奏法 8小節目直前~8小節目末:ダウン・ボウ奏法の演奏例 8小節目の直前にあるE1に続く音がダウン・ボウになります。 キースイッチ:D#1…アップ・ボウ(上げ弓)奏法 10小節目直前~10小節目末:アップ・ボウ奏法の演奏例 10小節目の直前にあるD#1に続く音がアップ・ボウになります。 オルタネイト奏法 12小節目直前~12小節目末:上記を組み合わせて作ったオルタネイト・ボウ奏法の演奏例 ダウン・アップを交互に繰り返すことで実現 ちなみに前出の2例の様に同じ奏法で同音程の音を繰り返すことを「マシンガン効果」と言い、演奏が単調になるので避けた方が良いと言われています。ただし、Velocity値を工夫して回避する手もあります。 キースイッチ:D1…自動オルタネイト奏法 14小節目直前~14小節目末 14小節目の直前にあるD1に続く音が自動的にオルタネイト・ボウになります。 E1/D#1を利用して作ったオルタネイト・ボウと同じ動作 ただし、必ず交互に演奏されるので、例えば「ダウン、ダウン、アップ」のような演奏は出来ません。 また、D1を置いた直後の音が必ずダウンになります。 ---------------------------------------------------------------------------------- 4-3 キースイッチ:F1…ピチカート奏法 16小節目直前~16小節目末:ピチカート奏法の演奏例 16小節目の直前にあるF#1に続く音がピチカートになります。 ---------------------------------------------------------------------------------- 4-4 キースイッチ:F#1、G1…トレモロ奏法 キースイッチ:F#1…ミュート・トレモロ奏法 18小節目直前~18小節目末 18小節目の直前にあるF#1に続く音がミュート・トレモロになります。 キースイッチ:G1…トレモロ奏法 19小節目直前~19小節目末 19小節目の直前にあるG1に続く音がトレモロになります。 18、19と続けて聴くと、違いが分かります。 ---------------------------------------------------------------------------------- 4-5 キースイッチ:G#1、A1…半音トリル奏法 キースイッチ:G#1…ミュート・半音トリル奏法 21小節目直前~21小節目末 21小節目の直前にあるG#1に続く音がミュート・半音トリルになります。 キースイッチ:A1…半音トリル奏法 22小節目直前~22小節目末 22小節目の直前にあるA1に続く音が半音トリルになります。 21、22と続けて聴くと、違いが分かります。 ---------------------------------------------------------------------------------- 4-6 キースイッチ:A#1、B1…全音トリル奏法 キースイッチ:A#1…ミュート・全音トリル奏法 24小節目直前~24小節目末 24小節目の直前にあるA#1に続く音がミュート・全音トリルになります。 キースイッチ:B1…半音トリル奏法 25小節目直前~25小節目末 25小節目の直前にあるB1に続く音が全音トリルになります。 24、25と続けて聴くと、違いが分かります。 4-7 まとめ 欲しい奏法の直前にその音を選択するためのキースイッチを置けばよいです。キースイッチのキーを押すのではなくて、音符を置くことを意味します。 なお、キースイッチに相当する音の長さ・強さは任意であります。 また、キースイッチはインストゥルメント毎に異なるので、都度マニュアルで確認して下さい。 キースイッチとして挿入された音符のところでは音は鳴りませんので、ご安心下さい。何故なら、各楽器の発音域を超えているからです。簡単に言えば、キースイッチの部分は音(サンプル波形)が用意されていないんですね。だから標準的なやり方ではその部分の音は絶対に出ません。 目次へ戻る 5.リバーブ編 GPOのサンプルは、殆どがドライなサンプル(リバーブがあまり掛かっていない録音)なので、単体では音が痩せて聞こえます。 従って、このリバーブを併用することで空間的な広がりがある音に出来ます。 やりすぎると「お風呂でコンサート」の状態になりますが、パラメータを少し変えて薄く掛ければ効果的です。 リバーブをかけるためのフリーソフトがあります。Garritan社のサイトからダウンロード出来ます。画面lの真ん中より少し上のところにある「AMBIENCE REVERB」です。 使い方ですが、まずダウンロードしましたgarritan_ Ambience.dllをProgram Files の中のSSWV8の中のVSTPluginのフォルダーの中に入れます。 5-1 オーディオミキサーのアイコンをクリックします。 ![]() 5-2 オーディオミキサーの画面が現れるので、右端のMasterと書かれているところに「Chan EFX」というボタンがありますので、そこをクリックします。 ![]() 5-3 下図のパネルが出ます。チャンネル・エフェクト・ラックといいます。 ![]() 5-4 Garritan Ambience[VST FX]を選択します。 ![]() 5-5 EDITボタンをクリックします。 ![]() 5-6 操作パネルが現れます。このパネルで、リバーブ効果を付けます。通常では、下記のDRY/WETの混合の操作と、CPUへの負荷低減の2つの操作だけで十分のようです。 DRY/WETの混合 右下の水平スライダ2つ、DRYとWETです。デフォルトではWETが100%(0db)でDRYが0%(-無限大db)ですが、個人的にはこれだとリバーブが掛かりすぎだと感じるので、WETを減らしてDRYを増やすようにしています。分量は完全に個人の好みですが両方とも右側に持って行くと、音量が大きすぎて音割れがすることがあるので注意して下さい。 CPUへの負荷低減 SHAPEの中のQUALITY/CPU(中央下部)がデフォルトでは100%になっていますが、もしもCPUへの過負荷で音飛びなどが発生する際には、この値を小さくしてみて下さい。今までの経験では30%程度でも充分使い物になります。 その他は必要に応じて触れば良いでしょう。 ![]() 5-7 これで、エフェクトをかける準備はできましたが、この状態では、まだエフェクトはかかりません。 下図のSENDと書かれたところにつまみが4つありますが、これは上で出てきましたチャンネル・エフェクト・ラック(4つのラックがありますが)に対応しています。1番目のラックにリバーブ効果を設定しましたので、SENDつまみの1番のところで、OFF→PREかPOSTを選びます。これでエフェクトがかかるようになります。
5-8 オーディオ・ミキサーでは下のように、1つのインスタンス入れた楽器全てでメーターが動いているでしょうか。 もし動いていないようなら、5-9以降を参照して下さい。 ![]() 5-9 1つのインスタンスに入れた楽器全てのメーターを動かすには ![]() ![]() 5-10 打ち込まれたデータが耳に届くまで ![]() ![]() ![]() ![]() 6.音がもたるようなら Garritan Personal Orchestraを使うにあたって、メーカーの動作環境条件を満たしていて、なおかつ、音がもたるときは、 もしかしてオーディオインターフェイスの設定がマズイのかもしれません。ASIOドライバの設定が上手く行ってないのかもしれません。 SSWの「設定」メニュー→オーディオポートの設定→出力ポートのデバイスのところは「装置名」の後に(ASIO)と書かれているデバイスを選択する必要があります。 ここは2008年9月30日に記載したものです。 私の場合、これでもまだ音がもたりました。それで、全部のトラックを一度に録音するのではなく、次のようにしました。22個の楽器を使った曲がありました。これを一度に鳴らしますと、私のPCの処理能力では、プチプチ音がかなり強烈に入りまして、とても使い物になりませんでした。そこで、1インスタンス上に8個の楽器が割り当てることが可能ですので、全部で3インスタンスを使いました。1番目と2番目のインスタンスをまず録音して、オーディオトラックの1に入れ、次に、オーディオトラックの1と、3番目のインスタンスを、オーディオトラックの2に録音するという手段で、なんとか、正常にMP3化に成功しました。 この操作方法を図解しました。 バウンスについては、インターネット社の次のページを参照下さい。 http://www.ssw.co.jp/dtm/mixdown/Mix_VSTi_01.htm ----------------------------------------------------------------------------------------------- これで、基本的に音が出るようになり、奏法の切り換えが出来るようになりました。またリバーブ効果も付けることが出来るようになりました。 kaeru298様に教えて頂いたのですが、フリーのVSTリバーブで、IRリバーブのSIRというのがあります。 こちらにありますので、試してみられるとよいと思います。 目次へ戻る 7.音楽の表情付けについて 音源Garritan Personal Orchestraの音がSSW上で出るようになりましたが、これを、HQ-Orchestralでは不満があったモーツァルトの曲を、Garritan Personal Orchestraで聞いてみました。リバーブも掛けてみましたが、たいした違いがなかったのです。 折角良い音源を導入したのに、何にもならないではないかとがっかりしかけました。 しかし、私の音作りが間違っていたことが後から判明したのです。私はこれまでコントローラで使ったのは、Velocity位であとの機能はあまり利かない(?)ため、殆ど無視してきました。 Garritan Personal Orchestraは、コントローラの効果をよく知り、また、またキースイッチによる音色切り換えの効果を知ることにより、及びその他の効果を付けることにより、表情豊かで、実際の演奏家が演奏するのに近い演奏が可能となることを、kaeru298様から教えて頂きました。 モーツァルト ピアノ協奏曲21番第2楽章冒頭(表情付けの出来たデータ) モーツァルト ピアノ協奏曲21番第2楽章冒頭(べた打ちのデータ) 音楽の表情付け目次 7-1弦楽器を例にとって解説 音に表情を付けるために、弦楽器を例にとって解説します。マニュアルの28ページに、弦楽器の表情付けに使用するコントロールの種類が載っています。それに沿っています。 7-2Velocity 弦楽器では、上のキースイッチのところで述べました、非サステイン系(スタッカートとピチカート)の音色はVelocityで音量を調節します。Modulationは音量の変化に無関係です。 7-3Modulation サステイン系(スタッカートとピチカートを除く全部の奏法)はModulationで音量を調節します。Velocityは音量の変化に無関係です。これはGPOでは非常に大切なコントローラです。下記で使い方を詳細に述べています。 7-4 Legato ControllerCC#64:上の4-1を参照下さい。 7-5 Portament ControllerCC#20:最初は使う必要性は無いでしょう。 PortamentとGlissandoの違いだけ述べておきます。 ポルタメントは開始音と終了音の間に存在する「全ての高さの音」を連続的に通過するのです。この場合の全ての高さというのは楽譜に書けない(要するに半音単位よりもさらに細かい)音も全て含みます。 いわば、斜面上を移動するようなものです。理由は簡単で、バイオリンにはフレットが無いからです。 対してグリスサンドは開始音と終了音の間に存在する「全ての高さの半音階」を続けて演奏するのです。 まあ、階段を上り下りするようなイメージです。理由は簡単で、ピアノは半音単位で調律された鍵盤が、ギターにはフレットがあるからです。 別の言い方をすると、ポルタメントは音程を楽譜に書けない。グリスサンドは(例えば多連符などで)譜面に書ける。そう言った違いです。 ※フレットというのは、指板の表面をいくつにも区切る突起した線。ギターなどに付いている。 7-6 Length ControllerCC#21: ノート・リリース後のリリース・サウンドの長さをコントロールする事が可能です。使用法としては、リリース時に"スパッ"とサウンドをとめる場合には、"0"、リリース時に余韻を持たせる場合には"127"に値を設定するといったものとなります。 7-7 Variability ControllersCC#'s22&23: あまり利用する場面がない CC22では、サウンドの音程をあえてランダムに変化させ、人間味を付加する事が可能です。 CC23では、サウンドの強弱をあえてランダムに変化させ、人間味を付加する事が可能です。 表情付けの目次へ戻る 7-8 モーツァルト ピアノ協奏曲21番 第2楽章冒頭の第1ヴァイオリンのModulationの変化グラフ ![]() このようなModulationの変化を付けるのにはどうすればよいのでしょうか? 7-9 法則性と、短い曲での実習 この手の細かい変化の事を「フレージング」とか、もう少し細かいレベルでいうと「アーティキュレーション」とか呼びます。 音楽をやる人の間では、「ここのフレージングってどうしたらいいですかねぇ?」とか「この部分のアーティキュレーションはこんな風にしたいんだけど、どうかなぁ?」などという様に使う言葉です。 またそれを考えることを日本語では「解釈する」、もっと簡単には「唄う」と言いますね。 (本当は、解釈は曲全体などもっと大きな単位で考えるべきものではありますが、このように小さい部分にも当て嵌まります) この「唄い方」には、ある程度の法則性があります。 ・楽譜を横方向に読んで、どこからどこまでが一つのフレーズなのか見つける例えば、KV467-2mov,V1の場合、(楽譜上の)2~4小節でひとかたまり、5~7でひとかたまり……といった具合です。 但し、各フレーズの切れ目は必ずしも休符で分かり易く区切られている訳ではありません。 また多くの場合、フレーズは「入れ子構造」(複数の小さなフレーズで一つの大きなフレーズを形成する)になっているものです。 ・次に各フレーズの中で、始まりの部分、一番盛り上がる部分、終わる部分を探します。要するにフレーズ内部での起承転結です。どんなに短いフレーズにも必ずあります。 該当するフレーズが主旋律の場合、最も音が高く長い音符が盛り上がる箇所であると言えるでしょう(100%ではないが、比較的多くの場合に当て嵌まる)。またこの曲のように明るい曲調で滑らかな雰囲気の場合には、その確率が高くなります。 (逆に暗めの曲調の場合には、低い音を強くすることで、迫力や、もがき苦しむ様などを表現することもできます) 例えばこの曲の2~4小節では、3小節目のCの白玉が当て嵌まります。 そうやって楽譜を眺めてみると、なんとなくこの3小節が「中凸で弓なり」に見えてきませんか? そうなれば、もうこっちの物です。弓なりに音量を変化させるだけで、かなり「それっぽく」聞こえるハズです。 もっと細かい部分(例えば2小節目の内部に2つ山があることなど)は、この段階をクリアした後の問題なので今回は触れませんが、基本は一緒です。 あと一つ注意して頂きたいのは、与えた数値による音量と聴覚上の音量は必ずしも一致しないということです。 これには「音の高さ」が関係します。人間の耳には良く聞こえる音域と聞こえづらい音域があるのはご存じだと思いますが、大雑把に言って、同じ楽器ならば高い音ほど強く聞こえるのです。従って、作曲者は強く聞こえて欲しいところは大きな音量記号を割り当てるか、または高い音を割り当てるものです。同じ音量でも次第に音程が上がっていく部分は、何もしなくてもcrescに聞こえるものです(逆も然り) この訓練ですが、一つ良い方法があります。 準備するものは、 ・バッハの「G線上のアリア」の楽譜(ここに※ありますので、これを印刷して下さい) ・鉛筆 ・音源 ・ CD で、音を聴きながら、楽譜の上(別紙じゃダメです、必ず楽譜の上に音符に沿って)にバイオリンの音量変化を「自分が聞き取ったままに」グラフで書き込んでみて下さい。 次にそのグラフ通りに自分で打ち込んで下さい。まずは最初の数フレーズだけで良いでしょう。 用意した音源と聞き比べてみましょう。同じになるか違うのか? これを楽譜と音とグラフの関係をよく考えながら、辛抱強く繰り返します。 あと、楽譜とグラフを見ながら口で唄ってみましょう。 まぁ数回もやれば、雰囲気は掴めると思います。 学ぶの語源は真似るですからね(*^_^*) ※なお、この親サイト http://icking-music-archive.org/index.php には、沢山楽譜があります。 表情付けの目次へ戻る 7-10 グラフの描き方 7-10-1図解 ![]() ![]() ![]() 7-10-2解説 「車は急にとまれない。さて、音はどう?」 車を運転する場合、例えば時速40km/hで走るとして、アクセルを踏んだ瞬間に40km/hになり、ブレーキを踏んだ瞬間に停止する、そんなことがあるでしょうか??(図1) 無理ですよね。そんな事をしたら加速度が無限大になってしまうので、車にも乗っている人にももの凄い負担が掛かります(というか、厳密には物理的に不可能) 一体どの様に速度は変化するのでしょう? 経験的に分かるように、アクセルを踏むと次第に加速していって、ブレーキを踏むと次第に減速していきますよね。(図2) これは加減速に投入できるエネルギー(エンジンの出力)には限度があり、また車が質量を持っているのが理由です。 では、音はどうでしょうか? ここで言う「音」とは楽曲の中で使われている音符という意味ですが、あえて誤解を恐れずに言えば、「音も急発進・急停止は出来ない」んです。 つまり、ある音が鳴る際には、音量の増加・減少が伴うことが多いものなのです。 (明確に効果を狙う場合は除く) 音と一口で片づけるのはちょっと大変なので、以降はサステイン奏法(ロングトーンなど)に話を限定しましょう。 さて今目の前に、白玉音符だけが書かれた楽譜があるとします。 音量記号は何も付いていません ただし拍分きっちり最後まで延ばすことが要求されているとします。 この白玉音符音は、最初から最後まで同じ音量で演奏されるのでしょうか? (譜例1) 実際に打ち込んで聞いてみれば分かりますが、非常に機械的な感じがします。 そう、ベタ打ちのロングトーンが非常に不自然に聞こえる理由の1つがここにあるのです。 では一体どうしたら、自然に聞こえるのでしょうか? その対策こそが今回の主題、ロングトーンの cresc / decresc です。 ~~~~~~~~~~~本題~~~~~~~~~~~~ さて、急発進・急停止が出来ない音を適切に処理するためには、音の開始と終了地点において何らかの音量変化、所謂 cresc / decresc をする必要があります。 では例えば譜例2の様に、cresc / decresc 記号(松葉記号などとも呼びます)が付いた音符の音量は、どの様に変化させると良いのでしょうか? cresc / decresc に対しては、それぞれ大別して3種類の音量曲線が考えられます(譜例2) (1)上凸曲線 (2)直線 (3)下凸曲線 (4)階段状(今回は省略) 実際の演奏はこれら各3種類の<>を組み合わせて表現されます。 では、どの様な組み合わせが良いのか?? これは非常に難しい問題であり異論も多々あるとは思いますが、まず大雑把に言って私は(2)の直線変化は使いません。 聴いてみると分かるのですが、このパターンは機械的な雰囲気があります。 また、人間がキチンと直線状に音量を変化させるのは、非常に難しいというのも理由の一つです。 では(1)と(3)どちらを使うか? これはフレーズ毎に違うので、強い法則性はありません。 しかし目安はあります。 目安を示したのが図3です。 ここで注目すべきは「単位時間あたりの音量変化」です。 単位時間に変化する音量が大きい程、激しく音量変化したことが分かります。 例えば cresc の場合、 ・上凸の曲線を選択すると、 「crescの開始地点で急激に音量が変化し、crescの終端では殆ど音量変化を感じることが出来ない」 ・下凸の曲線を選択すると、 「crescの開始地点ではゆっくりと音量が変化し、crescの終端で急激に音量変化を感じることが出来る」 と言えます。 decrescでは逆の効果になるということは、容易に推測できると思います。 これらの音量変化特性を考慮すると、幾つか使用すべきケースが見えてきます。 例えば、「ふわっと」音に入りたい場合は上凸cresc、頂点付近でグッと盛り上げたい場合には下凸cresc、と言った具合です。また、フレーズ間で「息継ぎ」をする場合には殆どの場合、上凸decrescです。 なお、crescの音が長い(数小節など)場合には、ほぼ確実に下凸を使います。 そこで上凸を使うと、音量の頂点付近で音量変化が感じられず、crescしたかどうかが全く分からなくなるからです。 どれくらい凸か?というのも難しい問題で、規則性はありません。 あくまで、その場の雰囲気に馴染むかどうかで、必ずと言っていいほど試行錯誤が必要です。 音量頂点部の処理 cresc / decrescを組み合わせる際に、もう一つ注意すべきことがあります。 それは音量頂点部をどう処理するか?です。 例えば下凸crescと下凸decrescを組み合わせることを考えてみましょう(図4:左) この組み合わせの場合、音量の頂点は「ほんの一瞬」だけしかありません。 これを耳で聞くと、頂点部では指定した音量最大値よりもずっと小さな音量に聞こえます。 また直線crescと直線decrescの組み合わせも同様の聴覚上の効果をもたらします。 つまり、折角頑張って<>しても、その効果は半減してしまうんですね。 こういう場合には頂点部に音量が平坦になる部分を若干設けます(図4:右) 形状で言えば「富士山型」とか「台形」とかいう感じでしょうか。 この平坦部分の長さを上手く調整することで、盛り上がった感じが出せます。 最後に繰り返しておきますが、どの曲線パターンを、どれくらいの曲がり具合で用意するか?は、曲の雰囲気、音の長さ、パートの役割などによって全て異なるため、正解はありません。 また、判断は打ち込んだ数値の大小ではなく聴覚上の音量に依存するので、自分が一番相応しいと感じられる音量変化が得られるよう、試行錯誤してみて下さいね。 表情付けの目次へ戻る 7-11拍子について 7-11-1図解 ![]() ![]() ![]() 7-11-2 解説 今回のお題は「拍子」です。 ~~~~~~~~~~~~~いんとろだくしぉん~~~~~~~~~~~~~~~~~ 打ち込み音楽が平坦に聞こえてしまう原因の一つに、リズム感の無さが挙げられます。ここで言うリズムというのは「拍子」の概念です。 一番理解が容易なのは3拍子でしょう。例えば今、頭の中でご存じの3拍子の曲(ワルツあたりが良いですね)を思い浮かべて下さい。 さて、「ワルツのリズムを歌ってみて下さい」と言われたら、どのように説明しますか?人それぞれかもしれませんが、大体においてコンセンサスのある表現として、 「ずん・ちゃっ・ちゃっ、ずん・ちゃっ・ちゃっ…」 とか 「ぶん・ちゃっ・ちゃっ、ぶん・ちゃっ・ちゃっ…」 ではないでしょうか?? これを 「ずん・ずん・ずん、ずん・ずん・ずん…」 や 「ちゃっ・ちゃっ・ちゃっ、ちゃっ・ちゃっ・ちゃっ…」 または 「ちゃっ・ずん・ちゃっ、ちゃっ・ずん・ちゃっ…」 と歌う人は、まず居ないと思うのです。 違う言い方をしましょう。 ワルツを振っている指揮者をコンサートやテレビなどでご覧になったことがあると思います。 彼らは何時(どのタイミングで)棒を振っているでしょうか?? もう、お分かりですね。 そう。「ずん」の部分で棒を振り下ろすのです。 この辺りは、有名な大指揮者様ではなく、アマチュアの指揮者や代指揮のように、キチンと拍毎に振る人の動きを見た方が分かり易いですね。 ではこの、「ずん」と「ちゃっ」の違いは一体なんでしょうか? この違いこそが今回の主題、「拍子」の概念です。 ~~~~~~~~~~~~~~~本題~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ さて、ワルツに話を戻すと、この「ずん」を強拍、「ちゃっ」を弱拍と呼びます。 強拍の位置は、まず「小節の最初の拍」です。 従って、曲の途中から聴いても、すぐに小節の頭が分かるんです。 ところ~が(@_@;)/ MIDIデータには拍子の概念がありません(マイッタ!) 従ってベタ打ちの段階では、 「ずん・ずん・ずん、ずん・ずん・ずん…」 になるのです。 これだから「機械臭い」演奏になるんですねぇ。 ではどうすれば良いか?? 答えは簡単。 強拍が強めに聞こえるようにVelに変化を付ければよいのです。 (添付:譜例1参照) どれくらいVelに差を付けるかですが、これは曲調やリズムを刻んでいるパート、パート数にも依るので「一概にこの値」とは言えません。「拍子が感じられる強さ」にすることが正解です。 と言っても何も参考にするものが無いのも困りますよね。 私の場合、取りあえずの値として「弱拍は強拍の90%」を目安にして始めることにしています。 そうして変化を付けた状態で聴いてみて、過不足を補うという方針です。 なお、スコアの進行を見て頂ければ分かると思いますが、強拍の位置はコントラバスやチューバなど低音楽器の音(これをベース音と呼びます)が始まる位置と一致している例が多く見受けられます。 作曲者はリズムパートに相当する楽器に拍子のニュアンスを強く与えるので、低音を強調すれば自然とリズム感が付くと思います。逆に、リズムパートの進行を参考にVelの変化を判断するのも一つの手でしょう。 3拍子以外はどうするか? 代表的なところでは、 2/4は「強・弱」 4/4は「強・弱・中強・(最)弱」 6/8は「強・弱・(最)弱・中強・弱・(最)弱」 (譜例2~4参照) なお最弱拍(最後の拍)は、必ずしも弱くする必要は無いと思います。 「最弱拍 = 弱拍」でも、聴覚上はあまり問題でしょう。 実際に全ての小節に対してここで説明したVelの変化を与えるのは大変かもしれません。 そこで目立つ部分からやってみると良いでしょう。 目立つ部分とは、パート数が減って音が薄くなる部分、リズムパートが減る部分など、リズム感が薄くなりがちな部分です。 そうそう。クラシックはロックではないので、リバーブと同様「やり過ぎない」ことが重要です(*^_^*) 譜例5ですが、3/4拍子の部分も6/8拍子の部分も強弱を付けなければ、同じリズムに聞こえます。 ところが、3/4拍子の方へ、ズン、チャッ、ズン、チャッ、ズン、チャッと、ズンを強調して、 6/8の方はズン、チャッ、チャッ、ズン、チャッ、チャッと、ズンを強調して聴きますと、違うリズムであるように聞こえます。 リズムを付けることの重要性がお分かりいただけたことと思います。 表情付けの目次へ戻る 7-12指示音量と聴覚上音量の違いについて 今回は打ち込んだ数値通りに音量の効果が得られない、そんな場合に気をつけるべき聴覚の不思議について説明します。 7-12-1図解 ![]() ![]() ![]() ![]() 7-12-2 解説 音源のサンプル音は音量レベルが一定になるように調整されているのが普通ですが、これは必ずしも聴覚上の特性までをも考慮している訳ではありません。従って、同じ数値で音量を指定したとしても、音の高さによって耳に届く音量は違ってしまいます。 この点を考えるのが今回の主題、聴覚上の音量です。 ~~~~~~~~~~~本題~~~~~~~~~~~~ まず譜例1をみて下さい。 1小節目はC4、2小節目はC5、3小節目は両者混在となっています。 この譜例をVnls1 KSで、「キースイッチE、Vel=80(一定)、テンポ:4分=100」程度に設定して聞いてみて下さい。 どのような音量に聞こえますか? 若干の個人差はあるでしょうが、音量に段差がついて聞こえませんか? 次に、譜例2を同様に設定して聞いてみて下さい。 特別に音量変化を与えなくても、4/4のリズムに聞こえませんか? 更に、譜例3です。 単なるC-durの音階ですが、音程の上下に従って、<>しているような印象を受けます。 少なくとも><の様には聞こえないでしょう。 これらは不思議な現象ですよね。 指定したVel値は全て同じなのに音量差が付いて聞こえる、リズムを付けていないハズなのに付いて聞こえる、cresc/decrescが付いていないのに盛り上がって聞こえる。 つまり、高い音ほど強く聞こえる傾向にあるのは、何故なんでしょう? 私には生理学的な知識が無いので理屈は説明出来ませんが、結果だけ言えば、この様に聞こえてしまうのが人間の耳の特徴なのです。人間の耳には、音の周波数によって聞こえ易い部分と聞こえ難い部分があるんですね。 この現象は、しばしばDTMにおいても悪さをすることがあります。 例えば、あるフレーズの中に極端に音程が違う(音程の段差)部分があるとします。 そして、そのフレーズは全体として滑らかに繋がって聞こえて欲しいと仮定します。 そんな場合、全ての音を均一なVel(またはMod)で再生すると、その段差部分だけが極端な音量で聞こえてしまい、「滑らかに繋がって欲しい」と言う意図から外れる事になります。 ではどうするか? その対策には2種類のアプローチが考えられます。 一つは「飛び抜けた音の音量値を調整する」方法であり、もう一つは「段差を埋めるように前後でcresc/decrescする」方法です。 譜例4:G線上のアリア V1 4(a):12小節目のD5~B5、13小節目のA5~A4 4(b):8小節目のA5 譜例4(a)において、前半のD5~B5へのジャンプ部は後者(ジャンプ前にcresc)、後半のA5~A4への落下は前者(A4以降を持ち上げる)の方法で対応すると、2小節間が1つのフレーズとして感じられるようになります。 譜例4(b)は逆に音を目立たせる例です。 フレーズの流れを見るとA5の前後の音はそれぞれA4とC5であり、それ程離れている訳ではありません(上行する流れ)。ごく自然に考えればこのA5はA4でも構わないのです。そこに敢えてA5を持ってきているのですから、確かに目立って欲しい音だと言うことが分かります。 なお、自然な流れを考えれば極端に大きくしすぎるのも不自然なので、ここの音量はそれらの点を考慮して決める必要があります。 弦のパートで、この音程と音量の関係に対して特に気を配る必要があるのがコントラバスです(場合によってはチェロも)。 コンバスが和音の最低音(ベース音)を拍の頭に合わせて比較的短めの音で弾いているようなパターンが多く見受けられますが、この様な場合には和音の進行と楽器の発音域の問題から1オクターブ近い音程の跳躍が発生することが多々あり、それによって高い音が非常に目立つことがあります。(譜例5) この様な場合には、パート単体で音を聞いてみたり、他のパートの動きを見たりすると不自然さが分かるものなので、もし変だなと感じたならば、回りの流れをよく見ながら音量調整をしましょう。 また、このパターンに近い例としてアルペジオ(分散和音)が挙げられます。 小節全体を白玉の和音で弾く代わりに短い音で和音をバラして弾くことで、音を厚くしすぎないと言う手法ですが、このアルペジオの場合にも「音が高くなったら音量は控え気味にする」という処理が効力を発揮します(譜例6) なお注意して欲しいのは、作曲者がこれら音程の違いを効果として狙っているのか?、はたまた演奏する側が自主的にバランスを取ることを前提としているのか?を常に考えながら音量調整を行うという点です。 音が部分的に高い/低いからと言って短絡的に値を変更することは禁物です。 最後は結局、持っている音楽の知識、自分の耳と感性を総動員して判断するしか手はありません。 表情付けの目次へ戻る 7-13 パートの役割と振る舞い ~~~~~~~~~~~いんとろだくしぉん~~~~~~~~~~~~ 「隣は何をする人ぞ」 例えばピアノ伴奏を伴ったソロ曲のように最初から役割が明確に割り振られている曲以外でも、パートの役割を考えることは非常に大切です。 これはテレビドラマやお芝居と同じ考え方で、みんなが主役ということはあり得ないからです。 もし仮に、全パートが「自分が主役だ!」と思って合奏に臨んだら、一体どうなるでしょうか? つまり奏者全員が「オレが、オレが!」と、我先に目立とうとする状態です。 結果は自ずと推測できるように、その音楽は聴くに堪えないものになってしまいます。 曲想もへったくれもありません。ただただ、がなり立てるだけの「音の固まり」です。 では逆に、みんなが「オレは脇役だ」と思って弾いたら? どうも主張のハッキリしない、消極的でぼんやりとした音になってしまいますね。 よく楽器を弾くときに「周りの音を聞け!」と言われます。 (「のだめカンタービレ」の冒頭で千秋とのだめが連弾をするときに、千秋がのだめに「オレの音を聞け」と言うシーンがありますよね。アレです) 合奏(つまり複数人で連携をとって1つの音楽をつくる行為という意味ですが)の際には、全体はどうやって進行しているのか?、そして自分は何をすべきなのか?を常に注意しながら演奏することが求められます。 なんと言っても「合奏」、つまり「各奏者が息を合わせて演奏する」のが目的なんですから、これは当然のことです。 では、打ち込みの際にはどうすれば良いのでしょう? この場合、指揮者であるデータ作成者がパートの役割を、その都度割り振ってあげる必要があります。 割り振りが下手だと、「メロディーが聞こえない」とか、「リズム感が無い」とか、要するにバランスの悪い演奏になってしまう訳ですね。逆に上手く割り振ればパート間の分離が明確になり、音に空間的な広がりや立体感が出てきます。 今回は、このパートの傾向と役割分担をどう扱うか?という点を説明していきます。 ~~~~~~~~~~~本題~~~~~~~~~~~~ 実際の楽曲には、シンプルで楽譜をみれば一目で構造が分かるものから、じっくりと腰を据えて取り組まないと意図がくみ取れない複雑なものまで、それこそ曲の数だけバリエーションがあります。 しかし、いきなり無限に近い多様性を説かれても混乱するだけでしょうから、今回の説明では敢えてバッサリと大まかに分類するだけに留めます。 例えてみれば、「A型の人は几帳面な性格」などと、(真偽の程はともかく)人間の性格を血液型や星座を用いてパターン化するような程度のお話ですので、そのつもりで読んで下さい。 ------基本的な考え方------ ・パートの役割には、どんなものがあるのか?最も単純なものは「主役、脇役、リズム」の3役、複雑なものでも「主役、脇役、リズム、準主役、装飾」の5役に分類できると仮定します。 どうしても当てはまらない場合には、全部まとめて「チョイ役」とでもしておいて下さい。 ・パートの特徴(見分け方)は? 主役パート…主旋律。音域は比較的高め。 脇役パート…比較的単純な音形で、一定の音を刻む様なもの。中間音域が多い リズムパート…拍子を取るためのパート。主に低音 準主役パート…主旋律のユニゾン、対旋律 装飾パート…主に、主旋律よりも高い音で部分的に現れる短いフレーズ。もしくは、フレーズ同士の間に「合いの手」状に挿入される短いフレーズ ・データを作る際には何に気をつければ良いのか 主役パート…好きなように、思い切り唄う。目立つ。相対的に音量も大きめ。 脇役パート…背景に相当するので、薄くなりすぎない程度に音量を抑える。拍子の感じを必ず付ける。 リズムパート…強弱拍の感じをしっかり付ける。音量は比較的大きめで構わない。 準主役パート…主役パートと同様。ただし音量には気をつける。対旋律は主旋律より音程が低いので、音が埋もれないように注意する。 装飾パート…主役パートが動いている場合には、音量を控えめにする。合いの手の場合には、しっかりと目立つようにする。 なおここで言う音量は聴覚上のものであり、またパート数によっても変動する。「主役が1パートで、脇役が5パート」の場合と、「主役、脇役共に1パート」の場合には自ずと異なる。分類されたパートをグループとして扱い、グループ毎の音量だと思えばよい。 ・その他、注意すべき事 曲によってはパートの役割が場所毎に切り替わることがある。それまで主旋律を弾いていたパートが急に白玉音符に変わって脇役パートになると言ったことである。これは1つのフレーズ内でも発生する(フレーズがバトンタッチされる)。 この様な場合、主役になったパートはすぐに表に出て、脇役になったパートは後に引っ込まなければならない。 要するに役割はパートに固有のものと考えてはいけない。あくまで、スコアを縦方向に読んで判断すべきものである。 ------実際には------ さて、ここまで読んできて「こんなメンドクサイ分類なんか分からないし、やりたくないよ!」と思うかもしれない。(実際には非常に大事なのだが、慣れないと見分けられないことも確か) そこで参考までに簡単な分類法を示そう。「目立つ、目立たない」の2分類法である。 ただし、「メロディーとリズムがどの音符なのか把握できている」ことが条件だ。 もしもこれらが掴めているなら、あとは簡単。それ以外を「目立つ、目立たない」の2つに分ければ良いのだ。 指標はズバリ「短い音符の固まり=目立つ、長い音符の固まり=目立たない」である(もちろん例外も沢山あるが最初はこれで充分。装飾音は含めない) 例えばG線上のアリア※におけるV1以外のパートを考える。3~4、5~6小節目のV2とVaでは、V2の方が音が短い傾向にある。この場合にはV2をより目立たせる必要がある。 8~9小節目の境目では、8小節側ではV2が、9小節目ではVaの方が音が細かい。従って8小節側ではV2を、9小節目ではVaを目立たせればよい。 (ここは実際には、この2つのパートの間で1つの流れがバトンタッチされている)。10,12,15~16,18も同様である。 「合いの手」状の音というのはBCの6小節目後半に出てくるようなパターンを言う。ここでは他の3パートが全て白玉なのにも関わらず、BCだけが16分の音階だ。このような部分は、「しっかり目立つ」必要がある。 ※バッハの「G線上のアリア」の楽譜(ここにありますので、これを印刷して下さい) 再度まとめれば、短い音の固まり(これを「音が動いている」と呼ぶ)は、長い音の固まりよりも目立つように音量を与えるとよい、ということである。 なお、データ作成の際には、前回説明した音の高さの効果にも気をつけるように。 目立たせるつもりで音を大きくしたが、音程が低くて目立たない(またはその逆)ということもある。 表情付けの目次へ戻る 最初の目次へ戻る |