花模様

移調楽器 解説(KenKen様によるものです)

たしか、ソプラノ・リコーダーって、穴を全部押さえるとドの音がでましたよね。んでもって、中学校ではアルト・リコーダーってヤツを習いませんでしたか?同じリコーダーなんだけど、指使いがちょこっと違うヤツ。穴を全部押さえるとファの音がでたはず。バロック式とかジャーマン式とかいう運指表をみながら、一生懸命指使いをさらいなおすことに、当時は何も疑問を感じなかったんですよね。

でもね、アルトの穴を全部押さえるとファの音がでるということは、ソプラノの運指で言えば、「ドを吹くとファ(半音7つ、つまり完全5度下の音)がでる)」ということです。同じく、レを吹くとソ(完全5度下)、ミを吹くとラ(完全5度下)、ファを吹くとシのフラット(完全5度下)…。

そうなんです。ぜ〜んぶ、完全5度下の音がでるんです。

ちょっと待てよ…。そんなんだったら、一つひとつ運指を憶えなおすよりも、楽譜を“あらかじめ完全5度上にしておいて、ソプラノの運指どおりに演奏する”と、ラクじゃない?

つまり、ファの音を吹いて欲しいときは、楽譜にわざとドと書いておきます。すると演奏者はドの音を見て、ソプラノの運指どおりに穴を全部押さえて吹くと、なんとファの音がでるという仕掛けです。

これが移調楽器の概念です。

これだったら、例えば「ドを吹くとソ(完全4度下の音)がでる)」楽器だったら、あらかじめ楽譜を完全4度上にする(移調する)、「ドを吹くとシのフラット(長2度下の音)がでる)」楽器だったら、あらかじめ楽譜を長2度上にする(移調する)と、オールマイティに対応できるのです。

勿論、作曲家には負担が増えますが、楽器の持ち替えが頻繁だった、古典の時代にはこのほうが合理的な方法だったのでしょう。