ブラームスは、ピアノと弦のための五重奏曲をこの一曲しか残していない。しかも、このブラームスの曲は、ブラームスの室内楽曲の中で、傑作たる地位を失わず、注意深く構成され、人工的と感じられない自然のまとまりを持っていて、室内楽史上ユニークな立場を占めている。
この曲は、やはり、ハイドン、ベートーヴェンおよびシューベルトの影響を示しているが、以前の作品とくらべてその影はごく薄くなっている。そして、ブラームス的なものがようやくはっきりと表面に出るようになっている。北国的な渋味と暗さ、巨大でありながら緻密な構成、若さのみなぎる情熱、そうした中に、ブラームス特有のやわらかさと諦観が流れている。1864年に完成した。(音楽の友社刊、名曲解説全集から抜粋しました。)
尚この曲は2台のピアノ用にブラームス自身が編曲している。
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